代表挨拶

2020年度 科研費学術変革領域研究(A)として「マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界」が採択されました(2020-24年度)。本領域は、これまで私たちが知らなかった、もしくは見ようとしてこなかった新たなタンパク質の世界を開拓する領域です。これまでヴェールに包まれていた未開拓のタンパク質世界を明らかにするには新しいアイディア・手法・材料が必須ですので、多くの研究者の参画を歓迎します。計画研究に加えて公募研究も含めた多様な研究からブレイクスルーを起こし、生物学における新たなパラダイムの確立をめざします。ご期待ください。

領域代表 田口英樹
東京工業大学 科学技術創成研究院
細胞制御工学研究センター 教授

研究班概要

 ここ数年の間に従来のタンパク質像が大きく変革しつつある。これまでのタンパク質研究は、リボソームがmRNA内の遺伝子読み枠(ORF)の開始コドンから終止コドンまでを翻訳し、完成したポリペプチド鎖が立体構造を形成して機能するという過程を前提としている。しかし、近年の様々な発見や技術革新によるブレイクスルーから、従来のタンパク質の見方が大きく変化している。例えば、翻訳は、想定されている遺伝子読み枠の開始コドンAUGから始まって淡々とアミノ酸をつないで終止コドンで終わるだけではない。翻訳はしばしばAUG以外から始まったり、翻訳伸長途中で止まったり、途中終了したりするなど、非典型的な翻訳が普遍的であることが分かってきた。非典型的な翻訳は、神経変性疾患に関与する塩基リピート配列から起こる開始コドンAUGに依らない翻訳開始(RAN翻訳)のように病気に関与する場合もある。関連して、タンパク質をコードしないという定義で命名されたノンコーディングRNAが生理的に意味のあるタンパク質に翻訳される例が続々と見つかってきている。質量分析に基づくプロテオミクス解析の技術革新などによってプロテオームを構成するタンパク質のレパートリーは増加の一途をたどっている。
 また、タンパク質はいつもフォールディングして機能するわけではないこと、特定の場所・特定の構造状態で機能を発揮するだけではないことも分かってきた。例えば、タンパク質によっては完成前、すなわち翻訳途上で機能を発揮する例が見つかってきている。また、タンパク質によっては、複数のオルガネラへ局在し、その多重局在が機能に直結することが分かりつつある。
 このように、不変と考えられていた「タンパク質の世界」にはこれまで見えていなかった多くの面があり(multifaceted)、我々の認識する世界は拡大し変容しつつある。すなわち、タンパク質を真に理解するには、タンパク質の合成過程、種類、機能発現様式における従来の常識を疑い、これまで欠けていた新たな視点でタンパク質の世界を再定義していく必要がある。
 そこで本研究領域では、拡大し変容するタンパク質の世界を「マルチファセット」な視点で開拓しながら、その実体、分子機構、生理的な意義と制御を明らかにし、タンパク質に基盤を置く生命科学に新たなパラダイムを構築することを目的とする。

計画班紹介

01 非典型的な翻訳動態の多様性・普遍性と分子機構
 田口 英樹(東京工業大学・科学技術創成研究院・細胞制御工学研究センター 教授)

本領域の目標は、これまで見えていなかった多面的な(マルチファセット)タンパク質の世界を明らかにすることにある。研究代表者(田口)の最近の発見も含めて生命のセントラルドグマの終端である翻訳過程に大きな未開のバイオロジーがあることがわかってきた。例えば、翻訳途上の新生ポリペプチド鎖(新生鎖)によっては翻訳を途中で終了させる場合がある。このような非典型的な翻訳は翻訳レベルでタンパク質の発現・機能を制御し、プロテオームを拡張しうるが、その詳細は不明である。そこで本研究では、非典型的な翻訳の普遍性、分子機構、細胞内での動態、機能などを解析することで、マルチファセットなタンパク質の世界の一端を開拓し、細胞内タンパク質科学のパラダイムシフトに貢献することを目的とする。
具体的には、領域内での融合研究を含めながら以下の研究を推進する。
1)新生鎖に依存した非典型的なリボソーム動態の普遍性と分子機構。
2)非典型的な翻訳から産まれるタンパク質の多様性と生理的意義。
3)生細胞内での非典型的な翻訳のイメージング。

  • Konno H, Watanabe-Nakayama T, Uchihashi T, Okuda M, Zhu L, Noriyuki Kodera, Kikuchi Y, *Ando T, *Taguchi H. Dynamics of oligomer and amyloid fibril formation by yeast prion Sup35 observed by high-speed atomic force microscopy. Proc Natl Acad Sci USA 117, 7831-7836 (2020)
  • Niwa T, Uemura E, Matsuno Y, *Taguchi H. Translation-coupled protein folding assay using a protease to monitor the folding status. Protein Sci 28, 1252-1261 (2019) selected as Protein Science 2019 Best Paper Award.
  • Chadani Y, Niwa T, Izumi T, Sugata N, Nagao A, Suzuki T, Chiba S, *Ito K, *Taguchi H. Intrinsic ribosome destabilization underlies translation and provides an organism with a strategy of environmental sensing. Mol Cell 68, 528-539 (2017)
  • Chadani Y, Niwa T, Chiba S, *Taguchi H, *Ito K. Integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling reveals widespread translational pausing. Proc Natl Acad Sci USA 113, E829-E838 (2016)
02 機能性翻訳途上鎖の生理機能と分子機構
 千葉 志信(京都産業大学・生命科学部・教授)

機能性翻訳途上鎖(機能性新生鎖)は、原核生物から真核生物まで広く見出されており、翻訳途上のタンパク質が生理機能を発揮するという点で典型的なタンパク質と大きく異なる(図)。これらは、「制御された翻訳アレスト」という共通の機構で多様な生理機能を発揮する。本領域が指向する「従来のタンパク質科学の枠組みを超えた先にある未開のタンパク質の世界を明らかにする」という点で、このようなユニークな機能発現をする機能性翻訳途上鎖は興味深い研究対象であるが、この翻訳アレストの分子機構や機能発現様式の共通性と多様性については、未だ知見が限定的であり、機能性新生鎖に共通の作動原理があるのか否かについては明らかにされていない。
以前我々は、枯草菌に由来する機能性翻訳途上鎖MifMを発見した(Chiba et al., EMBO J. 2009)。さらに、最近になり、他の真正細菌の翻訳アレスト因子を新たに3つ同定した(未発表)。本研究では、特に後者の3種類の翻訳アレスト因子の分子機構と生理機能を、遺伝学、生化学、の手法を用いてそれぞれ解析することを目指す。また、真核生物の翻訳アレスト因子の解析を担当する分担者の内藤らと協力し、翻訳アレストの分子機構に生物種を超えた共通性が存在するのか否か、また、生物種の違いにより翻訳アレストやその機能発現にどのような多様性が生じるのかを解明することを目指す。さらに、これらの解析を発展させ、翻訳アレストの引っ張り力に対する感受性を利用した「引っ張り力センサー」の開発を目指す。

  • Fujiwara, K., Katagi, Y., Ito, K. and Chiba, S. (2020) Proteome-wide Capture of Co-translational Protein Dynamics in Bacillus subtilis Using TnDR, a Transposable Protein-Dynamics Reporter. Cell Rep. 33, 108250.
  • Shimokawa-Chiba, N.*, MÜller, C.*, Fujiwara, K., Beckert, B., Ito, K., Wilson, D. N.#, Chiba, S.# (2019) Release factor-dependent ribosome rescue by BrfA in the Gram-positive bacterium Bacillus subtilis. Nat. Commun. 10, 5397. (* equally contributed; # corresponding authors)
  • Chiba, S. and Ito, K. (2012) Multisite ribosomal stalling: A unique mode of regulatory nascent chain action revealed for MifM. Mol. Cell 47, 863-872.
  • Chiba, S., Lamsa, A. and Pogliano, K. (2009) A ribosome-nascent chain sensor of membrane protein biogenesis in Bacillus subtilis. EMBO J. 18, 3461-3475.

【研究分担者】内藤 哲(北海道大学大学院農学研究院・特任教授)

<真核生物からのアプローチ>
細胞内環境などに応答してプログラムされた翻訳アレストを引き起こす機能性翻訳途上鎖は,近年,真核生物においても報告が増えつつある。機能性翻訳途上鎖は,リボソームの出口トンネル,中でも出口トンネル内にリボソームタンパク質のuL4とuL22が突き出た「狭窄部位」と相互作用することで,翻訳アレストを引き起こすと考えられている。
これまでの研究で,シロイヌナズナのuL4が出口トンネルに突き出たβ-ループの頂点近くに位置するArg-77のアラニン置換(R77A),もしくは,これを挟むThr-75とVal-79の欠失(ΔTV)を導入した変異型リボソームを持つ株を作出している。これら変異株から調製した試験管内翻訳系を用いた解析により,真核生物で報告されている機能性翻訳途上鎖への効果を調べた結果,変異の影響はそれぞれに異なっており,uL4との相互作用の違いを示すと考えられる(図; 論文1)。本研究では,uL22への変異導入やuL4の他の部位への変異導入に挑戦するとともに,真核生物が持つ他の機能性翻訳途上鎖の解析へと展開し,機能性翻訳途上鎖とリボソーム出口トンネルの相互作用を明らかにしたい。

  • Takamatsu S, Ohashi Y, Onoue N, Tajima Y, Imamichi T, Yonezawa S, Morimoto K, Onouchi H, Yamashita Y, and *Naito S. Reverse genetics-based biochemical studies of the ribosomal exit tunnel constriction region in eukaryotic ribosome stalling: spatial allocation of the regulatory nascent peptide at the constriction. Nucleic Acids Res. 48, 1985-1999 (2020).doi: 10.1093/nar/gkz1190
  • Yamashita Y, Kadokura Y, Sotta N, Fujiwara T, Takigawa I, Satake A, Onouchi H, and *Naito S. Ribosomes in a stacked array: Elucidation of the step in translation elongation at which they are stalled during S-adenosyl-L-methionine-induced translation arrest of CGS1 mRNA. J. Biol. Chem. 289, 12693-12704 (2014). doi: 10.1074/jbc.M113.526616
  • Onoue N, Yamashita Y, Nagao N, Goto DB, Onouchi H, and *Naito S. S-Adenosyl-L-methionine induces compaction of nascent peptide chain inside the ribosomal exit tunnel upon translation arrest in the Arabidopsis CGS1 gene. J. Biol. Chem. 286, 14903-14912 (2011). doi: 10.1074/jbc.M110.211656
03 新規AUG非依存性RAN翻訳の分子機構とその神経変性病態における役割
 永井 義隆(近畿大学・医学部 脳神経内科 教授)

近年、遺伝子非翻訳領域内のリピート配列の異常伸長を原因とする筋萎縮性側索硬化症/前頭側頭型認知症(ALS/FTD)、脊髄小脳失調症(SCA)などノンコーディングリピート病と呼ばれる神経変性疾患において、これらのリピート配列を含む変異RNAは開始コドンAUGを欠くにもかかわらず、これらが鋳型となってリピート関連非AUG依存性(RAN)翻訳という新規の翻訳機構によりリピートペプチド(RAN-P)が産生され、これらが神経毒性を発揮して、神経変性を引き起こすことが明らかにされた。しかしながら、RAN翻訳の分子メカニズム、そしてRAN翻訳産物であるRAN-Pによる神経変性メカニズムは全く未解明である。
森らは、GGGGCCリピート異常伸長変異を原因とする家族性ALS/FTD(C9- ALS/FTD)において、RAN翻訳により産生されたリピートペプチド(RAN-P)が患者脳内に凝集・蓄積していることを明らかにした(Mori et al. Science 2013)。永井らは脊髄小脳失調症31型(SCA31)において、その原因となるUGGAAリピートRNAに結合するTDP-43がリピートRNAの高次構造を解きほぐしてRAN翻訳を抑制し、その結果神経変性を抑制することを明らかにし、RNAシャペロンによるRAN翻訳の制御機構を提唱した(Ishiguro et al. Neuron 2017)。
以上のことから、本計画研究では、RAN翻訳のメカニズムとそれに伴う神経変性メカニズムを解明することを目的として、以下の研究を行う。
1)RAN翻訳レポーター細胞を用いたRAN翻訳分子機構の解明
2)疾患モデル細胞・ショウジョウバエを用いたRAN翻訳の神経変性病態への役割の解明
3)RAN翻訳ペプチドによる神経変性機序の解明

  • Minakawa E.N., Popiel H.A., Tada M., Takahashi T., Yamane H., Saitoh Y., Takahashi Y., Ozawa D., Takeda A., Takeuchi T., Okamoto Y., Yamamoto K., Suzuki M., Fujita H., Ito C., Yagihara H., Saito Y., Watase K., Adachi H., Katsuno M. Mochizuki H., Shiraki K., Sobue G., Toda T., Wada K., Onodera O., *Nagai Y. Arginine is a disease modifier of polyQ disease models that stabilizes polyQ protein conformation. Brain 143(6):1811-1825 (2020)
    プレスリリース: http://www.med.osaka-u.ac.jp/activities/results/2020year/nagai20200527
  • Ishiguro T., Sato N., Ueyama M., Fujikake N., Sellier C., Kanegami A., Tokuda E., Zamiri B., Gall-Duncan T., Mirceta M., Furukawa Y., Yokota T., Wada K., Taylor J.P., Pearson C.E., Charlet-Berguerand N., Mizusawa H., *Nagai Y., *Ishikawa K. Regulatory role of RNA chaperone TDP-43 for RNA misfolding and repeat-associated translation in SCA31. Neuron 94(1): 108-124 (2017)
    プレスリリース: http://www.med.osaka-u.ac.jp/activities/results/2017year/article01
  • Takeuchi T., Suzuki M., Fujikake N., Popiel H.A., Kikuchi H., Futaki S., Wada K., *Nagai Y. Intercellular chaperone transmission via exosomes contributes to maintenance of protein homeostasis at the multicellular organismal level. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 112(19): E2497-2506 (2015)
    プレスリリース: https://www.ncnp.go.jp/press/press_release150428.html

【研究分担者】森 康治(大阪大学大学院医学系研究科 精神医学 助教)
  • Kawabe Y., *Mori K., Yamashita T., Gotoh S., Ikeda M. The RNA exosome complex degrades expanded hexanucleotide repeat RNA in C9orf72 FTLD/ALS. EMBO J 39(19): e102700 (2020)
    プレスリリース: http://www.med.osaka-u.ac.jp/activities/results/2020year/mori-20200827
  • Mori K., Weng S.M., Arzberger T., Rentzsch K., Kremmer E., Schmid B., Kretzschmar H.A., Cruts M., van Broeckhoven C., Haass C., *Edbauer D. The C9orf72 GGGGCC repeat is translated into aggregating dipeptide-repeat proteins in FTLD/ALS. Science 339(6125): 1335-1338 (2013)
04 ノンコーディングRNAから産生されるタンパク質の生理機能
 松本 有樹修(九州大学 生体防御医学研究所 准教授)

Long non-coding RNA(lncRNA)の定義は「タンパク質をコードしない200塩基以上のRNA」とされているが、実は100アミノ酸残基以下の小さなOpen Reading Frame(ORF)を持つと予測されるものも多い。しかしわれわれは、lncRNAに存在する小さなORFから翻訳される新規タンパク質を同定し、それらが重要な機能を持つことを明らかにした (Nature, 2017)。
すなわち、これらlncRNAは「ノンコーディング」ではなく、「コーディング」RNAであり、存在すらしないと思われていた未開拓のタンパク質を翻訳している。本領域が対象とするこのような新規タンパク質は、これまで見逃されてきた新たな機能性のタンパク質であり、原因不明のさまざまな疾患などに関与している可能性などが考えられる。そこで、網羅的にこのような新規タンパク質の同定を行い、それらの生理機能などを明らかにしていく。具体的には以下の課題に取り組む。
1) ノンコーディングRNA由来新規タンパク質の網羅的同定
2) 遺伝子改変マウスを用いた生理機能の解析
3) ヒトの疾患との関連の検討

  • Matsumoto A.*, Nakayama KI.: Hidden peptides encoded by putative noncoding RNAs. Cell. Struct. Funct., 18;43(1):75-83 (2018).
  • Matsumoto A., Pasut A., Matsumoto M., Yamashita R., Fung J., Monteleone E. Saghatelian A., Nakayama KI., Clohessy JG, Pandolfi PP.*: mTORC1 and muscle regeneration are regulated by the LINC00961 encoded SPAR polypeptide. Nature, 12;541(7636):228-232 (2017).
  • Matsumoto A., Clohessy JG, Pandolfi PP.*: SPAR, a lncRNA encoded mTORC1 inhibitor. Cell Cycle, 16:815-816 (2017).
05 細胞内タンパク質の多重局在とその制御機構の解明
 遠藤 斗志也(京都産業大学・生命科学部 教授)

タンパク質は生合成後,あるいは生合成途上に正しく働くべき目的地に配送されねばならない,そのために細胞はタンパク質の正確な細胞内配送を実現するシステムを用意していると考えられてきた。しかし,こうした細胞内のタンパク質局在化の基本原理が崩れつつある。たとえば,タンパク質はただ一つの目的地に配送されるのではなく,二重局在など複数の局在を示すタンパク質が数多く存在する。タンパク質は目的地に到達する前に回り道をすることがある。さらに私たちは,タンパク質の配送には,やり直し(校正)システムが存在することを見出した(Matsumoto et al., Mol. Cell 76, 191-205 (2019))。すなわち,ミトコンドリア外膜のAAA-ATPアーゼのMsp1は,外膜に誤配送されたテイルアンカー(TA)タンパク質をATPのエネルギーを使って引き抜いてER膜に送り込み,ERの強力な品質管理システムに供することで,誤配送タンパク質の分解か配送やり直しかが決まる。ERにも誤配送されたタンパク質を膜から引き抜くタンパク質が存在することが,最近別のグループから報告されるなど,「タンパク質の細胞内配送の校正」は一般的な概念になる可能性がある。本研究では,ミトコンドリアへのタンパク質輸送と品質管理を長年研究してきた利点を活かして,以下の問いに答えるべく研究を推進する。これらの研究を通じて,「タンパク質の配送の校正」という,タンパク質の細胞内局在様式に関わる新たな概念と原理を確立したい。
1)ミトコンドリアに誤配送されたタンパク質の校正システムは,その基質や,働くオルガネラについて,どこまで一般化できるか?
2)サイトゾルや各オルガネラに存在する,タンパク質の配送の校正に関わる因子の全貌は何か?
3) ミトコンドリアへのタンパク質輸送能は様々な要因で変動しうる。この変動に伴う局在の変化,局在が変化したタンパク質の働き,局在が変化したタンパク質の運命,はどのようなものか。

  • Takeda, H., Tsutsumi, A., Nishizawa, T., Lindau, C., Busto, J.V., Wenz, L.-S., Ellenrieder, L., Imai, K., Straub, S.P., Mossmann, W., Qiu, J., Yamamori, Y., Tomii, K., Suzuki, J., Murata, T., Ogasawara, S., Nureki, O., Becker, T., Pfanner, N., Wiedemann, N., Kikkawa, M., and *Endo, T. Mitochondrial sorting and assembly machinery operates by β-barrel switching. Nature ( published online, January 6, 2021)
    doi: 10.1038/s41586-020-03113-7
  • Araiso, Y., Tsutsumi, A., Qiu, J., Imai, K., Shiota, T., Song, J., Lindau, C., Wenz, L-S., Sakaue, H., Yunoki, K., Kawano, S., Suzuki, J., Wischnewski, M., Schütze, C., Ariyama, H., Ando, T., Becker, T., Lithgow, T., Wiedemann N., Pfanner, N., Kikkawa, M., and *Endo, T. Structure of the mitochondrial import gate reveals distinct preprotein paths Nature 575, 395-401 (2019)
    doi:10.1038/s41586-019-1680-7
  • Matsumoto, S., Nakatsukasa, K., Kakuta, C., Tamura, Y., Esaki, M., and *Endo, T. Msp1 clears mistargeted proteins by facilitating their transfer from mitochondria to the ER. Mol. Cell 76, 191-205 (2019).
    doi: 10.1016/j.molcel.2019.07.006
  • Sakaue, H., Shiota, T., Ishizaka, N., Kawano, S., Tamura, Y., Tan, K.S., Imai, K., Motono, C., Hirokawa, T., Taki, K., Miyata, N., Kuge, O., *Lithgow, T., and *Endo, T. Porin associates with Tom22 to regulate the mitochondrial protein gate assembly. Mol Cell. 73, 1044-1055 (2019)
    doi:10.1016/j.molcel.2019.01.003.
06 未開拓プロテオームの同定・定量技術の開発
 松本 雅記(新潟大学大学院・医歯学総合研究科・教授)

近年、未知のオープンリーディングフレームの発見や非典型的な翻訳開始や終結などが多数見出されており、実際のプロテオームはより複雑でこれまでの常識の範囲の中では探し出せないタンパク質を多数含んでいる可能性が高まっている。このような未知のプロテオームの探索には、核酸オミクス解析等で得られた情報を用いて質量分析データを解析する、いわゆるプロテオゲノミクスの利用が考えられるが、さまざまな技術的限界が存在する。本研究は、これらの既存のプロテオゲノミクスの技術的問題を克服するため、われわれが独自に構築した大規模絶対定量プロテオーム解析技術iMPAQT (in vitro proteome assisted MRM for Protein Absolute QuanTification) 法 【Matsumoto et al. Nat. Methods 2017】を発展させ、既存のプロテオゲノミクス研究と全く異なる思想に基づいたプロテオゲノミクスの枠組みである『仮説駆動型プロテオゲノミクス解析基盤』を創出する。構築された技術基盤を領域全体で共有し、未開拓プロテオームの全貌解明を目指す。

  • Kodama M, Oshikawa K, Shimizu H, Yoshioka S, Takahashi M, Izumi Y, Bamba T, Tateishi C, Tomonaga T, *Matsumoto M, *Nakayama KI. A shift in glutamine nitrogen metabolism contributes to the malignant progression of cancer. Nat. Commun. 11(1): 1320, 2020.
  • Hata K, *Izumi Y, Hara T, *Matsumoto M, Bamba T. In-line sample processing system with an immobilized trypsin-packed fused-silica capillary tube for proteomic analysis of a small number of mammalian cells. Anal. Chem. 92(4): 2997-3005, 2020.
  • Matsumoto M, Matsuzaki F, Oshikawa K, Goshima N, Mori M, Kawamura Y, Ogawa K, Fukuda E, Nakatsumi H, Natsume T, Fukui K, Horimoto K, Nagashima T, Funayama R, Nakayama K, Nakayama KI. A large-scale targeted proteomics assay resource based on an in vitro human proteome. Nat. Methods 14: 251-8, 2017.
07 未開拓タンパク質の1分子計測技術・デバイス開発
 渡邉 力也(理化学研究所主任研究員)

近年、従来のタンパク質の概念を覆す、細胞内でのタンパク質の特殊な存在様式や機能発現様式が注目されている。このような背景の下、タンパク質の機能を正しく理解するためには、単に細胞から単離して精微に解析するだけでなく、細胞環境をin vitroで再現する新規手法の開発が必要不可欠となる。本課題では、異分野融合研究を通じて、細胞機能の再構築技術を確立すると共に、レパートリーが増えつつある種々の新規タンパク質の1分子解析技術を開発する。更に、精微かつ大規模な1分子計測プラットフォームを確立することで、 “未開拓タンパク質”を1タンパク質レベルの感度、精度で網羅的に理解する次世代の1分子生物物理学研究を推進すると共に、生物学・医薬学にまたがる新知見の創出につなげる。
1)細胞環境の再構築・制御技術の開発
2)タンパク質の1分子機能解析技術の高度化

  • Sakamoto, S., *Komatsu, T.,*Watanabe, R., Zhang, Y., Inoue, T., Kawaguchi, M., Nakagawa, H., Ueno, T., Okusaka, T., Honda, K., *Noji, H., & *Urano, Y. “Multiplexed single-molecule enzyme activity analysis for counting disease-related proteins inbiological samples” Sci Adv (2020) 6, eaay0888
  • *Watanabe, R., Sakuragi, T., *Noji, H., & *Nagata, S.: “Single molecule analysis of phospholipid scrambling by TMEM16F” Proc. Natl. Acad. Sci. USA 115, 3066-3071 (2018)
  • *Watanabe, R., Soga, N., Fujita, D., Tabata, K. V., Yamauchi, L., Kim, SH., Asanuma, D., Kamiya, M., Urano, Y., *Suga, H., & *Noji, H.: “Arrayed lipid bilayer chambers allow single-molecule analysis of membrane transporter activity” Nat. Commun. 5, 4519 (2014)
  • Watanabe, R., Tabata, KV., Iino, R., Ueno, H., Iwamoto, M., Oiki, S., & *Noji, H.: “Biased Brownian stepping rotation of FoF1-ATP synthase driven by proton motive force” Nat. Commun. 4, 1631 (2013)
08 未開拓タンパク質データの収集・特徴抽出・予測
 太田 元規(名古屋大学情報学研究科 教授)


研究室HP



【研究分担者】
福地佐斗志
(前橋工科大学
工学部)
研究室HP

教科書的な翻訳ルールに従って生合成され,自発的に固い構造に折りたたまるという古典的描像の埒外にあるタンパク質が近年存在感を増している.ノンコーディングRNAや非典型的な翻訳機構に由来するタンパク質を対象とした予備解析では,それらの多くは比較的短い天然変性タンパク質であった.反復配列,低複雑性配列を含む天然変性タンパク質が翻訳後修飾などを契機として液-液相分離を引き起こして液滴を形成し,機能することも話題となっている.つまり本領域で解析対象とする未開拓タンパク質は,基本的には天然変性タンパク質だと考えられ,その構造・機能を理解するためには,対象となるデータを集めて編集し,情報解析する必要がある.申請者らはこれまでに天然変性タンパク質データベース:IDEALを構築・運用し,世界標準データベースに育て上げた.UniProt(タンパク質の配列と機能のデータベース)に登録されている未開拓タンパク質については,液滴形成や翻訳後修飾との関連などがわかるよう機能アノテーションを強化し,既存IDEAL を拡張する.ノンコーディングRNA や非典型的翻訳機構に由来するUniProt未登録の未開拓タンパク質は,それらを論文などから収集し,新規データベースを構築して統計解析を実施する.将来的には二つのデータベースを統合した新IDEALを開発し,データ解析による未開拓タンパク質の特徴抽出と予測法の確立を目指す.

  • H. Anbo, H. Amagai. and S. Fukuchi, NeProc predicts binding segments in intrinsically disordered regions without learning binding region sequences. Biophys. Physicobiol., 17, (2020) 147-154
  • R. Koike, M. Amano, K. Kaibuchi, M. Ota, Protein kinases phosphorylate long disordered regions in intrinsically disordered proteins, Prot. Sci. 29 (2020) 564-571, doi: 10.1002/pro.3789
  • M. Ota, H. Gonja, R. Koike, S. Fukuchi, Multiple-localization and hub proteins, PLoS ONE 11 (2016) e0156455
  • S. Fukuchi, T. Amemiya, S. Sakamoto, Y. Nobe, K. Hosoda, Y. Kado, SD. Murakami, R. Koike, H. Hiroaki, M. Ota, IDEAL in 2014 illustrates interaction networks composed of intrinsically disordered proteins and their binding partners, Nucleic Acids Res. 42 (2014), D320-D325

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